ネイティブが英語を話す生のスピードってすごく速く聞こえますよね。
まぁ実際速いんですよね。次が日常会話の風景です。
英語を聴きなれない人にとっては何を言っているか分からないほど速いと思います。
少しTOEICと比べてみましょう。
TOEIC公式問題集のパート4の問題をいくつかピックアップしてスピードを測ってみると、概ね160~180wpm程度でした。
「wpm」とは「words per minute」、つまり1分間に発音される英単語数です。
ちなみにCNNなどの主要ニュースでキャスターが話すスピードが180~200wpm程度
なので、TOEICの1.1倍程度のスピードという事になります。
一方ネイティブが話す日常会話のナチュラルスピードは200~220wpm程度なのでTOEICの1.2倍程度のスピードになります。ちなみに、ネイティブの早口は250~300wpmに達します。TOEICがやっとという人にはとても聞き取れません・・・
対象 | wpm |
TOEICリスニング | 160~180 |
CNNなどニュース | 180~200 |
ネイティブナチュラル | 200~220(max300) |
しかし、まずはTOEICのスピードをしっかりマスターすることが大切です!
なぜ英語を聞き取れないのか
まず文法や英単語を理解していなければ、耳に入ってくる音声は聞き慣れぬ呪文にしか聞こえません。つまりリスニングの土台となる基礎は必須となります。
基礎が出来ているにも関わらず聞き取れない場合、それは音声のスピードに脳が付いていけていない可能性が高いです。次々と飛び込んでくる音声を脳が処理しきれずに理解が追い付かない、という状態になってしまっています。
パソコンで例えれば、多量のインプットを受け取った時に性能が足りなくてフリーズしてしまう状況に似ています。
脳の性能を上げるには
次から次へと流れてくる英語の音声を理解できるように、脳に性能アップを施す必要があります。
例えばパソコンで考えてみると、性能向上には次のような方法が考えられます。
・ハードウェア的な方法・・・CPUやメモリを交換することで性能を上げる
・ソフトウェア的な方法・・・OSやソフトウェアの設定、プログラムの内容などを改善する
脳の場合、部品を交換して性能を上げる事は出来ません。そこでパソコンでいう所のソフトウェア的な改善手法によって脳の性能を上げていくことを考えます。「脳の設定を変える」のです。
ただし脳に栄養を与える事で徐々にではありますが物理的性能を上げて行くことは可能です。次の記事を参考に。
速聴のすすめ
脳の設定を変えるにはどうすれば良いか。効果的な方法に「速聴」があります。その名の通り「速く聴く」勉強法です。
通常よりも速いスピードで音声を聴くことで脳の設定を速いスピードが当たり前であるように書き換えてしまうのです。
ただし、一朝一夕で脳を改善することはできません。継続的なトレーニングが必要です。
英語を聴くスピード
英語の勉強し始めはネイティブの半分程度或いはさらに遅いスピード、つまり100wpm以下程度でじっくり聞き、英語への理解を深める事が大切です。
最初から速いスピードで聴いて「全く聞き取れない!」と挫折してしまわないように最初は理解に重点を置きます。
しかし英文法や英単語をある程度身につけた後も同様のスピードで勉強していてはいつまで経ってもTOEICやネイティブの発話スピードについて行くことは出来ません。
一定の実力を身につけた後はリスニングのギアを上げる必要があるのです。
TOEICのスピード
TOEICの勉強し始めであれば、TOEICに慣れるためにTOEICのスピードである160~180wpm程度で聴くことは大切です。
しかしいつまでもTOEICの通常スピードで聞いていても、TOEICの音声が「ばっちりクリアに聞こえる!」というレベルまでは到達できません。
いや、通常スピードのままでは到達するのに膨大な時間がかかってしまう、と言った方が正しいかもしれません。
そこで速聴を取り入れます。
速聴の効果
速聴を取り入れる事で様々なメリットを享受することが出来ます。
高地トレーニング効果
TOEICに慣れたらいつまでもTOEICの通常スピードに留まる必要はありません。速いスピードの英文を聞き込むことで、あなたの英語力は飛躍的に向上します。
つまり高速スピードに慣れる事で「高地トレーニング」と同様の効果を期待できるのです。
普段の勉強では通常(160~180wpm)の1.2倍(192wpm~216wpm)で音声を聴き込むことで、TOEICを超えるこのスピードに耳を慣らします。
そして試験本番で通常スピードの音声を聞くことで「遅っそ!」という感想が漏れるほどクリアにリスニングの音声を聞き取る事が出来るようになります。
時間短縮効果
1.2倍で英語を聴く勉強法を続ければ、勉強時間を1/1.2にする事が出来る、という事を意味します。
この数字を見る限り大したことが無いように思えるかもしれませんが、継続的な勉強が必要な語学には非常に大きな効果を生み出す事になります。
例を上げると語学学習の時間の目安に1,000時間というものがあります。語学をある程度身につけるには1,000時間が必要であるという考え方です。
通常スピードで1,000時間の勉強時間が必要だったところを、1.2倍の速聴では833時間で同等以上の効果を得る事が出来るのです。
つまり167時間の時間短縮効果を享受することが出来ます。1日2時間の勉強をしていたとしたら、83日分の短縮効果です。これは大きい・・・。
英会話への応用
ネイティブの会話スピードは200~220wpm程度であると上で書きました。TOEICの音声スピードを上げて聴くことでネイティブのスピードについて行くためのリスニング力の土台を作る事が出来ます。
TOEICを卒業したら英会話をやりたい!という方も多いと思いますので、速聴で勉強を継続することで英会話を始めた際にスムーズに学習に入る事が出来るでしょう。
速聴の方法
どのようなスピード、教材で速聴を行うと効果的なのかをご紹介します。
速聴の音声スピード
どれ位のスピードで聴くべきか。ちまたには2倍の音声で聴こう!などといった教材も存在します。しかし最初から2倍の音声を聞いても付いていける訳もありません。
最初はなんとか聞き取れるレベルで聴きます。人によっては0.8倍から始める必要がある場合もあるでしょう。
そして段階的に速度を上げ、1.1倍、1.2倍、1.5倍・・・聞き取れるのであれば2倍といった速度に手を出してみるのもアリでしょう。
自分が聞き取れるか聞き取れないかのギリギリのスピードでリスニングする事で、脳にほどよい負荷がかかります。楽に聞き取れる音声でばかり練習していても意味がありませんからね。
1.1倍が聞き取れるようになったら1.2倍、というように徐々に上げていくことで脳の限界を引き上げて行きます。
教材は何を使うか
シャドーイング学習法で紹介した「TOEICテスト Part 3&4 鬼の変速リスニング1」「TOEICテスト Part 3&4 鬼の変速リスニング2」といった、最初から複数の速度が収録された問題集を使うのも手です↓
とは言え速聴の教材にはTOEIC特化のものは多くないので、TOEICに重点を置いた学習がやりにくいのも事実。なので既に持っている問題集の音声スピードを自分でコントロールしてしまえばよいのです。
↓参考:TOEICの教材
音声スピードを変えるには
お手持ちの音楽再生プレーヤーにスピード変更機能があればそれを使っても良いですし、パソコンやスマホを持っている方であれば「聞々ハヤえもん」というソフトがおすすめです。PC、Android、iOSといった主要なプラットフォームで使えます。
このソフトの良い所は、音声スピードを0.1倍単位で変えられる所です。他のソフトでは1倍の次が1.2倍、1.5倍といったざっくりした区切りでしか変更できない場合も多いですが、聞々ハヤえもんではかなり細かい調整が可能です。
また音程が変わらないのも良いですね。他のソフトだと音声スピードを上げた時に音程も高くなってしまってヘリウムガスを飲んだ人がしゃべってるみたいになってしまいます・・・。
もちろん聞々ハヤえもんでも音程を変えようと思えば変えられますので、自分好みの音を作り出すことが可能です。
速聴の効果をさらに高める秘策
漫然と速聴をするよりも戦略的に速聴勉強法をこなす事でより早く目標に到達することが可能になります。
聞き流さない
「聞き流し」ではリスニング力は向上しません。聴きながら意味を理解しようと意識することが大切です。
脳は意識的に覚えようとしたことしか知識として定着させることができないのです。
英語のまま理解する
また「英語を英語のまま理解」できると良いですね。日本語訳をするとそれだけで時間がかかってしまいますのでスピード重視のTOEICでは付いていけなくなります。
英語のネイティブやバイリンガルの人たちは、英語で話したり聞いたりする時は英語で物事をイメージしています。私たちも英語の勉強の時はなるべく英語のまま理解することで英語力の向上を狙う事が出来ます。
シャドーイングを併用する
私がリスニングにおける最強の勉強法と考える「シャドーイング」を組み合わせる事で大きな効果が期待できます。
最初は私も0.8倍やナチュラルスピードでシャドーイングを行っていましたが、慣れてきたら1.2倍にスピードを上げてシャドーイングを繰り返しました。
この効果は絶大でしたね(1か月でリスニングスコアが160点上昇するほど)。それぞれ単独でも効果はありますが、より短期間で大きな成果をあげたい場合は「速聴」+「シャドーイング」を取り入れてみて下さい。
最初はなかなか大変かもしれませんが、使いこなせればTOEICのリスニングは制覇したも同然です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。速聴の効果や手法をご紹介しました。
速聴は英語に慣れた方がさらにリスニング力を伸ばすためにも使えますし、リスニング力が伸び悩んで困っているという方にもぴったりの方法です。
TOEICスコアが300点~500点程度であればまずはナチュラルスピードを聴きこなすところから始めて欲しいですが、500点を超えたあたりからは1.1倍、1.2倍といったスピードで速聴を始めてみて下さい。リスニングスコアが一気に上がりますよ。
速聴は勉強時間の短縮にも効果ありですし、やって損はない勉強法です。ぜひ取り入れてみて下さい。
最後までお読み頂きありがとうございます。もし少しでも役に立ちそうだと思われたら、ソーシャルメディアでの共有をお願いします。
コメント